中国一人旅の食事

中国では老人が一人で旅するなんてことは有りえない。中国の老人は
旅をするだけの金が無いのである。金が有ったとしても一人の旅も、一人で食事することも
好きではないらしい。それで老人である私が一人旅をしていたらかなり目立った。

目立ったことはさておき、旅先での食事であるが、中国で食べる処は二種類あると思う。
軽食を食べるところと、レストラン風のところである。中国の軽食は主に朝ご飯を
食べるところであり、これは一人でも入れる。しかしレストラン風の処は一人では入り難い。
何故なら中国料理は一人で食べることを想定していないのである。中国料理は一人分の定食とか、
一人分の弁当とかは基本的に無くて、円テーブルで、大皿を皆で突っついて食べる料理が基本である。
言わば大皿料理である。日本にも大皿料理はある。日本料理の場合、自分の食べる分だけ
小皿に取り分けるのが基本ではないかと思うが、中国料理の場合、取り分けることはなくて、
箸は大皿と自分の口を直接行き来して食べるのである。

西洋式にメインディッシュを魚にするか肉にするかを決めて、個人が別の料理を別々に
食べる習慣もない。中国料理は魚も肉も同時に注文して、全員が同じものを突っついて
食べる。とにかく中国料理は一皿の量も多くて、中国料理のレストランには
老人でなくても一人では入り難い。

北京の朝食には小龍包がお美味しい。中国では小龍包は主に朝食用である。



これは卵スープ。卵の他に海苔と海米と言われる小エビが入っている。味はその小エビの
塩味である。北京では朝、外食できるところが日本より多くて便利かもしれない。




ウクライナ料理店「キエフ餐庁」に行ったのだが、歌に聞きほれて料理の写真を撮るのを
忘れてしまった。西洋料理って、一皿を一人で食べるものですね。しかしここは中国なので
同じ皿の料理をみんなで突っついて食べた。但しスープのボルシチだけは一人分づつ注文した。
聴き惚れた歌はリクエストして歌って貰ったのだが、その歌は下をクリックすると聞けます。

北京のウクライナレストランでロシア人に歌ってもらった歌




実は下の写真は2008年に中国を引き上げる直前に、迎えに来たうちの奥さんと一緒に
「キエフ餐庁」に行って食べたキエフ風チキンカツレツである。キエフ風チキンカツレツとは
どんなものであるかというと、鶏肉の間にバターが挟まっていて、カツレツにナイフを入れると
鶏肉から、バターの匂いが香り立ち上ってくる料理である。この写真はナイフを入れた
後かもしれない。「キエフ餐庁」には2005年頃から行っていて、ここに行った目的は
料理より歌を聴くのが目的である。



北京の朝の食事にロバ肉のハンバーグを食べた。ハンバーグと言っても伝統的な食べ物である。
ロバ肉は北京では結構食べることができる。この時は泊まったホテルの近くの
胡同の中にこの店があった。やはり卵スープと一緒に食べた。




青海省・西寧に移動したので、夕食は西寧で食べた。食べたのは「羊肉串」と言われる羊肉の
串焼きと「面片」である。「羊肉串」はここで食べたのではないが、
「羊肉串」とはこんなもので、シシカバブ―である。




朝食付きのホテルの朝食。蒸しパンと茹で卵と漬けものだけ。朝食付きと言っても内容は
こんなもの。水のようなお粥があるにはある。外で食べたほうがおいしいものが食べられる。




西寧から貴徳という田舎町に移動して、昼食はこの地方の名物と言ってもいい「面片」を食べた。
手打ち広巾面を2㎝位に千切って、他にピーマン、羊肉、春雨などと混ぜて煮た麺類の一種。
ほんのりカレー味がして美味しかった。西寧でもこれを食べたがやはりカレー味がした
写真にビールの瓶が写っているが、実はこの店には「酒タバコ厳禁」と書いてあった。
この地方の回族(イスラム教徒)は酒タバコは厳禁らしく戒律が厳しいらしい。だから当然店に
ビールは無くて、店員が私が日本人であることを聞いて、特別に買ってきてくれたものである。




羊肉のしゃぶしゃぶ料理を食べた。火鍋とも言う。これは軽食料理ではなく、レストラン料理の
部類である。肉も野菜もタレも選択しなければならない。メニューの意味がわからないと
注文が難しい。もっとも白菜とか豆腐は日本語と同じであるからこれは注文ができる。
量的には肉だけ注文すれば十分だが、それでは野菜が食べられない。
この鍋料理は本来一人で食べる料理ではない。タレは北京風のゴマダレを選んだ。
鍋の中身は北京風とは違って、重慶風なのか辛かった。




この黒いものは蕨粉の春雨であったと思う。火鍋の鍋は一人用のものであったが、
各々の材料が多すぎてとても食べきれなかった。



青海省・貴徳で温泉賓館と言うところに泊まった。実はもっと安いところに泊まろうとしたが
そこは外国人は泊めてはいけないホテルであった。青海省には渉外旅館という制度があり、
渉外旅館である温泉賓館は外国人でも泊まれた。
そこは朝食付きであった。この他に卵が必ず付いて、お粥も食べられる。



温泉賓館の朝食では、「腐乳」という豆腐の発酵食品を食べた。チーズのような味がした。
塩辛いけれど、結構好きな味である。




下の麺は「新疆伴面」と言ったものであった。本来、新疆料理の麺は手打ち麺であるが、
これは手打ち麺ではなかった。別の皿の具を麺にかけて食べる。具にはいろいろの種類があって
選べる。汁がない麺の部類である。手打ち麺では無かったけれど、これでも結構うまかった。
ここでも缶ビールを飲んだが、店員が隣から買ってきてくれたものだった。
イスラム教の厳しい教えにより、ビールが飲めないところもある。

本当はこの地方に多い麺類は「蘭州ラーメン」かもしれない。蘭州は隣の甘粛省の
省都である。西寧でも蘭州ラーメンの看板はたくさん見た。しかし蘭州ラーメンの麺には
腰は無いし、スープはこくが無いし、美味しくないと思えたので、今回の旅行では
一度も食べなかった。「蘭州ラーメン」は汁のある麺である。
蘭州ラーメンにはラーメンと名前が付いいるので、日本のラーメンと比較してしまうのが
いけないのかもしれない。実際に「面片」や「新疆伴面」の方がずっとおいかった。



前と同じ店で、同じ料理である「面片」を食べた。しかし日本人がまた来てくれたと張り切って
作ってくれたのか、羊肉は多くなったように思うが、なぜかカレー味は無くなってしまった。
カレー味を出す元となるカレー粉は、この地方に無いと思うが、カレー味がする別の調味料が
有るのかもしれない。カレー味が無くなっても「面片」は美味しかった。




砂鍋という料理。土鍋料理で鍋ごと具材を加熱する。今まで食べた砂鍋は一人分の料理で
軽食の部類であったので、今回もそうだと思って、有名な砂鍋料理屋らしきところに入った。
しかしここの砂鍋は大勢で突っついて食べる部類の料理で、一人用の砂鍋より相当量が多くて、
値段も高く、40元もした。ここでは砂鍋の他にご飯も注文して食べるようであったが、
砂鍋一つでも食べきれなかった。




「羊肉串」は青海省西寧でも食べた。「羊肉串」元々はウイグルの料理でケバブと
言うのかもしれない。これに使う調味料はズーランと言うのだが、ズーランは
中国語としては外来語である。ズーランはクミンシードのことで、「羊肉串」には
クミンが振りかけてある、これによって「羊肉串」はとても美味しくなるのである。
ケバブとズーランとは一緒に西域から中国に入ってきたのかもしれない。
ケバブは「羊肉串」となり、ズーランは外来語のままで中国語として定着したようである。

「羊肉串」にとってズーランは、重要な香料なのだが、塩の振り加減も重要である。塩味が無い
「羊肉串」は、伸びたラーメンのようなもので全く美味しくない。
焼き方としては焼く前に肉を油を塗ってから焙る方法がある。下の小粒の「羊肉串」は、
油を塗ってから焼いたのかもしれない。それによって表面がカリッとして美味しいのである。

唐辛子も振り掛けるのだが、唐辛子を振りかけるどうかか聞いてくれるところがある。
中国人でも辛いのが嫌いな人がいるらしい。私は唐辛子を振ってもらったものが好きである。



西寧のチベット料理店で。餃子はチベット料理にもあるのだが、チベット料理の餃子の餡は、
肉だけだった。春雨とピーマンの炒め物や、チンゲンサイの炒め物みたいな料理は
これは中国料理で、チベット料理は肉ばかりのようで、チベット料理は注文しなかった。



チベット料理屋の中。民族的といういのか独特の雰囲気がある。



チベット料理屋の中で、チベット族の一家。母親と女の子は尼さんのようだった。
写真を撮って送ってあげることにした。



西寧のチベット料理店に二回も行ったのだが、二回目もチベット料理は肉ばっかりのようで
注文できなかった。注文したのはじゃがいもの細切り甘酢炒めと、スクランブルエッグだった。
後になって残念に思えたのはヤクの肉を食べなかったことである。ヤクの肉は硬いと
聞いていたので注文しなかったのであるが、食べてみるべきであった。



西寧で朝食に食べた「砂鍋」。肉団子が入っているが下には春雨も入っていたと
思う。ここの「砂鍋」は軽食としての「砂鍋」で、朝飯用だから一人分である。
前に食べた「砂鍋」はレストラン料理であるから一人分の料理ではなく量が多かった。



北京に戻って一応有名レストランに入る。孔已己(コンイージー)は、北京のあちこちに
あるのだが、入ったところはホテルに近い東四の孔已己だった。この料理の名前は
「魚香茄子」だったかな。マイルドな味で美味しかった。孔已己は紹興料理の店である。
上海とか紹興とかあっちの方の料理は結構おいしい。



孔已己の椎茸とチンゲン菜の炒め物。肉料理の東坡肉(トンポーロー)なども有名で食べた
かったが、一人の食事では、量が多くてとても食べきれない。その点、中国料理店に
一人で入るのはトテモは不便なのである。



紹興料理ならは紹興酒だと思って、紹興酒を頼んだ。お燗をして貰ったのだが、
一合などの少量はなく、1ボトル分がお燗されてきた。それで飲み過ぎた。



紹興酒は一番安い物を頼んだ。会稽山という紹興酒だったが
同じ会稽山でも年数によっていろいろあるらしい。



北京での朝食。北京市民が普通に食べると言う油条と豆乳と焼餅を注文してみた。
焼餅はパサパサで、豆乳は元々好きではなかった。朝飯には蒸し餃子の方がよかった。



まずい焼餅を食べた後、街でこれを売っているのを見てこっちの方が美味しそうだと後悔した。
名前は・・・・? 思い出せないが大きいクレープにタレを塗り野菜とかカリカリに油で
揚げた物(?)を包んで食べるものである。しかし北京ではこの商売は長く続けられないと思う。
何故なら北京での路上販売は禁止のはずであるから。クレープは左下のターンテーブルを
回しながら焼く。北京にいたころのことを思いだしたが、違法販売の取締り方法は
売っている人を連行するのではなく、商売道具を没収するのである。だからそのうち
この屋台とターンテーブルは没収されることになると思う。





北京の三環路のジンソンというところに洋華堂というスーパーがあって、これはヨーカ堂の
ことなのだが、そのすぐ南に回族料理の店がある。ここの味は美味しいので、北京いた頃
よく食べに行った。ここの「羊肉串」は大きいのでたくさん食べられない。串には下から
二番目くらいに羊の脂身が差してあって、これがトロッとしていて、たまらなく美味しい。
なぜ家から遠い三環路のジンソン橋の方まで行ったかというと、潘家園の骨董市に
いつも行っていたからである。ほかにヨーカ堂で日本のお惣菜のようなものが
売られていてよく買いに行ったからである。ついでにこの回族の店に行って
羊肉串」と「拉条子」を食べた。ビールも一本飲んだ。



この回族料理の店で注文するパターンは、下のような「拉条子」と羊肉串とビールの
三点セットである。セットと言って自分で決めたセットであって、中国にはコース料理とか
セット料理は無いのである。拉条子は本来新疆で料理でラグマンと言うものであるが、
これが回族に伝わり北京でも食べらるようになり、名前が拉条子」(ラーティアオズ)に
なったのだと思う。
北京のはトマト味であるが、新疆に行って食べたがトマト味は無かった。
拉条子」も「羊肉串」も気に入っている食べ物である。いや大好きな食べ物である。



拉条子と羊肉串を食べた回族の店。回族の女性はベールを被っている。この女性は
経営者の一族だと思う。中国では会計を担当するのは、オーナーか
その親族に限られているのではないかと思う。



北京の王府井の小吃街で食べた「爆肚」。牛か羊の胃である。ゴマダレで食べる。
初め「爆肚と言って注文したら、内臓と野菜を炒め物が出てきた。これではないと抗議したら、
北京の人がゴマダレで食べるものかと聞いてきたので、そうだと答えた。
王府井に来る田舎者には本場物の「爆肚」を出さないで、偽物の「爆肚」を出すらしい。
本場の北京の「爆肚」は牛か羊の胃をさっと茹でて、ゴマだれで食べるのである。
決して炒め物ではない。



北京の朝食で蒸し餃子を食べる。卵スープも注文した。漬物はサービスで、ただである。
蒸し餃子は小龍包を蒸している店に一緒にある。蒸し餃子は小龍包と同じく朝食用である。



北京の「胡同」で朝から、蒸し餃子や小龍包が食べられるところは、
小吃店と言って店先で蒸し餃子や小龍包を蒸している。



胡同とは北京の路地のことを言うのであるが、路地にある家にはトイレは無く、
共同便所を使う。その共同便所の前で野菜を仕分けている。なんかチョット・・・・。



中国にはデパートとか地下街に、中央に沢山テーブルを並べ、周りに各種の料理の
屋台みたいな店を配置した場所がある。そこに行けばいろいろな料理が選択できる。
北京に行けば飲茶が食べられだろうと思っている人もいるかもしれないが
飲茶は本来香港辺りの料理だから、北京では食べられるところが少ない。
王府井の地下に行けば飲茶が有るはずだと考えて、王府井へ行って飲茶を食べた。



王府井で食べたヤム茶。もとは四個入っていたが、一つ食べてから慌てて写真を撮った。



王府井の地下の、いろいろな料理が食べられるところは「美食街」といって
こんな店がたくさん並んでいて、なかなかおしゃれな場所でもある。



ここからは本格的宴会料理。中国を立つ前の晩、10人ぐらいで宴会をやったから
10種類以上の料理が食べられた。下はダックの肝臓を塩水に漬けたものか。
フォアグラに似た味がしたかな? これはとても美味しい。北京ダックの店には
必ずある料理だから、これは北京料理だろうか。



宴会をやったのは北京の牛街にあるトルファン餐庁であった。新疆料理の店だが、
注文した人の好みなのか、あまり新疆料理らしい料理は出なかった。
新疆料理本来の料理というのは、素朴な料理が多く、宴会料理となると
どうしても中華系になるのかもしれない。新疆料理である「羊肉串」はここでも食べたが、
拉条子」は注文されなかった。「拉条子」とか新疆伴面は主食だから宴会料理に
ふさわしくないのかもしれない。羊のあばら肉をスペアリブみたいに焼いたものが、
本来の新疆料理かもしれない。下の料理は新疆料理ではないと思う




これはラクダの足の掌の肉の料理。中華料理としてはめったに食べらない料理である。
これは新疆でよく食べる新疆料理なのだろうか。コラーゲンが一杯の料理であった。



これも新疆料理店で食べた中華系料理。料理人の名前が脇に貼ってあった。
名のある料理人が責任をもって作ったということを示している。



これは羊の胃の料理。内臓料理であるが、薄味で煮込んであって美味しかった。
ずっと上に載せた「爆肚」も北京辺りでは、殆どが回族の店で食べさせるのであるが、
このようなう牛や羊の内臓料理は本来回族料理なのかもしれない。
ちなみにイスラム教徒は豚は決して食べないので、この店にも豚肉料理は無いのである。